日本語クラスの授業準備って、大変ですよね。
最近出版されたばかりのテキスト(下巻の出版は2022年10月、上巻4月)で使いやすいものがあったので、紹介したいと思います。
この記事では、日本語教材『日本語で考えたくなる科学の問い 上下』を実際に授業で使った感想をレビューしたいと思います。
実際にテキストを使用してみて、良いところ7つ、気をつけるところ3つを、紹介したいと思います。
【良いところ7つ】
①ワークシートや授業教材がダウンロードできる!
授業準備が非常に楽です。出版社HPからワークシートやパワーポイントがダウンロード可能です。
凡人社HP https://www.bonjinsha.com/wp/kagakunotoi
別冊のワークブック『表現するための語彙文法練習ノート』も語彙や文法解説が丁寧で、授業や自習に使いやすいです。
②読解に全訳がついている(英・中・韓・ベトナム)
この4ヶ国語で学習者の8割をカバーできるそうです。読解が難しい内容なので、N1レベルの学生でも参考にしているようです。母語で正確な理解をした後で、ディスカッションができるのでありがたいです。
③読む意味がある読解文章(科学研究がテーマ)
「人はなぜ陰謀論を信じるのか?」「紙の本、手紙のノート、対面での会話は時代遅れなのか?」など、興味深い研究結果の読解です。自国の状況と比べることができるので、学生も「面白い」といって取り組んでくれました。
④本文語彙にアクセント記号がついている
語彙を覚える時に、アクセントと共に覚えられるのできれいな発音を目指せます。教師がモデルで発音する時も、辞書で調べる必要がないのでやりやすいです。
⑤語彙や文法の例文、問題が自然(コーパス、データベースに基づく)
( )の穴埋めをする時に、母語話者なら自然にすらすら言葉を予測できる良問が多いと感じました。
⑥上級学習者向け文法解説のコラムがある
初級で文法学習するときは、英語の解説を読んだり、典型的な例文で覚えたたりします。
中上級に進んだ時に、細かな類義表現(例えば「ても」「のに」「けれども」「が」の違い)について、使い分けを再度学び直すのが必要だと思いますが、なかなかきっかけが作れずにいました。
こちらのテキストでは類義表現の使い分けについて、第一線の研究者によって書かれた解説を読むことができます。学習者向けに書かれた解説ではありますが、最新の研究結果に基づいているので、日本語教師としても大変参考になります。
⑦表紙イラストがマンガ風で可愛い
イラストや挿絵が、内容の硬さをカバーする可愛さだと思います。教師の私もまず表紙に心を惹かれて手に取りました。途中の挿絵があるため、興味深く読み進めることができています。
気をつけるところ3つ
①論文のような内容なので難しい(できればN1以上)
N2の学生に使ったことはありませんが、それぐらいのレベルの場合、日本語学習のモチベーションが高くないと難しいかもしれないと思いました。
②英・中・韓・ベトナムの翻訳がわからない場合、ついていけないかも?
非漢字圏の学生で、N1に到達しないレベルだと、かなり難しそうです。
③日本語力があっても、知的好奇心が低い人は難しいかも?
たとえば、日本人の小学生には難しいかもしれません。
日本語学習者でN2〜N1を取れる人は大丈夫だと思います。
この教科書を教えるようになって、出勤が楽しみになりました。
上級クラスでに、お勧めです♪
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