直接法(日本語だけで日本語を教える方法)の具体的なやり方
日本語オンライン授業のやり方
※日本語の先生になったばかりの人や、外国語教育に興味のある方向けです!
今日から、今学期はじめての大学院の日本語クラスが始まりました。
入門日本語。何度やっても初回に一番緊張するクラスです。始まってしまえばとても楽しいのですが、「ゼロ初級」といわれる日本語が全く通じない(ことが前提の)クラスなので、
「私の説明、わかってくれるかな?」
「外国語でどんな質問がくるかな?」
とか、かなりドキドキします。
日本語教師というと、英語(やその他外国語)を使うイメージがありますが、私はできるだけ使わないようにしています。このように、日本語を使って日本語だけで教える方法を「直接法」と言います。なるべく日本語に触れる時間を多くしたいからです。
じゃあ、どうやって教えるか、というと、私は次の3つの方法を主に使っています。
①ジェスチャー、イラストなどの非言語情報
②フリップボードで示す
③教科書の母語訳、文法解説の母語訳 →英語を指しながら、日本語を話す
①ジェスチャー、イラストなどの非言語情報
たとえば
「いいです」「上手です」と伝えたい時に笑顔で「👍」のジェスチャーをしながら「いいですね〜」と言います。
「もう一回(読みましょう)」と言いながら、「1」の意味で、1本指を立てます。初めは英訳を言いますが、授業の最後ごろには、英訳なしにします。だいたいみんなその頃には「もう1回」の意味がだんだんわかってきます。
名詞などでしたら、イラストを描いてもいいですね。「車」と「自動車」の違いについて聞かれたりするとよく図を描いて説明したりします(「車」に「自動車」や「トラック」が内包されている図)。
②フリップボードで示す
これはオンライン授業が始まってから、やってみてよかった方法です。よく使うフレーズをテレビ番組であるようなフィリップボードに作っておき、日本語の下に英訳を書いておきます。こんな感じです
よんでください
Please read.
黒板に書いたりせず、見せるだけなので、時間の節約になります。教室で使う言葉のほかには、文法解説でよく使う言葉と英訳を作ってあります。例えば、
・他動詞/自動詞
・場所で(する) 場所に(いる・ある、いく、すむ、とまる)
・尊敬語/ 謙譲語
加えて、その日の学習項目の文法解説も作っておいたりします。
旅行に行く時、インターネットでホテルを予約しました。
旅行に行った時、おみやげを買いました。
教室だと大きい紙に書く必要がありますが、オンライン授業だと、なんと四角い付箋に書いてカメラにかざして見せれば大きく見えるんですよね(同僚の先生に教えていただきました!)本当に便利だと思います。
③教科書の母語訳、文法解説の母語訳
私が日本語教師になった25年ほど前は違ったのですが、最近はありがたいことに、初級のテキストは母語訳がついています。
私は母語訳を学生に見せるときでも、基本的に英語は音読しません。英語を指差しながら日本語で話します。例えばテキストに次のあった場合、次のように日本語を読みます。
Look at the illustrations and make sentences as in the example.
「イラスト(illustrations)をみてください(Look )。そして、例のように(example)文をつくってください(make sentences)」
(括弧の英語を指差しながら日本語を話す)
この方法は、大学院のころ受けていた中国語クラスの先生がやっていて、いいなぁと思ったものです。その先生、日本語がペラペラだったのですが、いつも中国語を話してくれたので大変勉強になりました。
ただ、外国語の解説が欲しいという学生さんもいますよね。直接法がいつもベストな選択肢とは限りませんが、今日のクラスではこの方法で授業を理解してもらえたようで、ほっとしました。無事に初日を終えて、これから学生さんと色々会話できるのが楽しみです。