日本語教師の皆さん、こんなお悩みありませんか。
先日、今年の授業が終わりました。
学習効果を高めるために【学期の最初に目標設定】【学期の最後に振り返り】をするようにしています。振り返りで、学生さんからこう言われることが多いです。
いつもは学生の社交辞令かと思っていたのですが、でも、今年は、学生の言葉をすんなり受け入れることができました。
なぜかというと、そういえば私の授業のモットーは「1週間で1番楽しい時間になること」だったなぁと思い出したからです。
そもそも楽しい授業とは、何なのでしょうか。学習者が楽しく感じられるようにするにはどうすれば良いか私の考えるコツ5選を紹介しようと思います。
知的に面白い授業
1番目として「知的に面白い授業」であることが挙げられます。
そうなるように、自分が得意な分野の知識を、授業冒頭の雑談や、教科書の解説などで話すようにしています。
もちろん、全ての分野について物知りな先生になることは難しいと思うのですが、例えば自分の関心があり、比較的よく知っているジャンル(私の場合①日本の経済や社会システムの話題、②認知心理学・学習心理学の話題、③着物や華道など日本文化など、が好きで詳しい)などから学生が興味を持ちそうな話を、わかりやすく紹介するようにしています。
加えて、教科書の内容をより深く詳しく、時として、多角的・反対の視点からも話せるようにするためにするためには、テーマに関連する書籍を何冊か読む、などの方法で授業準備を行なっています。
エンタメ的に面白い授業
①の「知的な面白さ」に加えて、留学生の興味がありそうな分野にもアンテナを広げ、②エンタメ的にも面白い授業になるようにしています。
日本語学習者は、日本の歌やアニメ、ゲームが好きな人が多いです。
私自身は、漫画やアニメなどの日本のポップカルチャーに全く疎いのですが、話題の日本アニメ映画は初日に見るなどして、学生の興味へ目を向けるよう心がけています。
もちろん、私のようにアニメやゲームがそれほど好きではない学生も多いでしょう。
ですから、それぞれの学生が好きなこと、楽しいこと、興味があることをお互いに紹介できるような場を、できるだけ持つように心がけています。
たとえば、私はゲームは全くやらない(できない)ですし、学生が好きだというアイドルの名前もわからないことが多いのですが、だからこそ、白紙の状態で、それらの面白さについて学生から教えてもらえるのだと思っています。
学習効果がすぐに実感できる授業
3つ目が「学習効果がすぐに実感できる授業」という視点です。
教育というのは、教えた効果が本当の意味で現れるのは、10年後、20年後になると思っています。その一方で、すぐに役に立つ内容というのもとても大事で、すぐに使える知識を学ぶ方が、学生の学習意欲も上がります。
例えば、日本人の友人との話す時の話題になるようなことも、すぐに役立つ知識の一つでしょう。友達との話題なりそうなニュースや、留学生が日常でよく使いそうな言葉をピックアップして伝えます。
「この言葉をこんな場面で使うと日本人がすごい!って言ってくれるよ」というように使い方もアドバイスします。
例えば「Uターン」という言葉を習ったらこんな感じで伝えます。
他にも、こんなことを行っています。
①テストをうまく解くコツ
(読解、聴解などでどの辺を中心に読めば・聞けば良いか)
②「この発音を直すと、ぐっとうまく聞こえる」などのアドバイス
③「ここを直すと、ずっとひらがなが綺麗に見える」などのアドバイス
④読む価値がある読み物を読む。聞く意味のある音声を聞く
たとえば
・早く寝る学生ほど成績が良い、
・所得が高い人ほど(健康を重視しているので)タバコを吸わない
など留学生の生活習慣の役に立つ読みものなどを紹介しています✨
また、学習効果を感じさせるため、学習目的を自分で設定してもらい、その目標に向かって学んでいけるようにしています。初日の授業では必ず学習目標を設定してもらっています。
活動に変化のある授業
どんなにやる気に満ちていても、授業中に疲れたり、やる気がなくなったりすることは良くあります。そのため④教室活動に変化を持たせるようにしています。
例えば、学生が学習に飽きているような時、いつもの会話練習がマンネリ化してきた時は、臨機応変に、いつもの活動を違う形に変えています。
例えばこのような感じです。
- ペア・グループで練習
- 1人で読解
- 手書きで作文
- 文法を会話で練習
- 教科書で学ぶ
- 教室の前に立って発表
- ジグゾーリーディング
- パソコンで作文
- 書いて練習
- 体を動かす・ゲーム教材を使う・歌を歌う
ちょっと活動の形式が変わっただけで、学習者はとても新鮮に感じるようです
楽しさと学習効果を両立できるような授業の雰囲気作り
5番目として、クラス全体で楽しく協力的に学びに向かっていけるような授業の雰囲気を作るようにしています。
たとえば、グループワークの時の指示はこんな感じで具体的に出します。
こんなちょっとの指示で、グループ活動が楽しくなります。
それから、たまにお菓子を差し入れることもありますね。
キャンディー一袋をみんなに配るだけで、クラスの雰囲気がガラッと変わって、和やかになったりしますよ♪
食べ物の持ち込みができない教育機関の場合、きっと学校行事などがクラスの雰囲気をよくするきっかけにできるのではないかと思います。
他には、学習者の細かないいところを見つけて褒めるなどもしています。例えば、いつも黒板を消してくれるとか、他の人の発言を待っていてくれるとか、学生のプレゼンに対して、前向きな質問・コメントを良くしてくれるなどです。
以前、就職の面接試験でこう言われました。
そのときは、楽しさと知識の習得は両立すると思うと答えました。私が大学生や大学院生の時、そして語学を学習していた時、楽しい上に役に立つ授業をしてくれる先生が沢山いたからです。
この質問をされて以来「授業の楽しさ」とは何か、ずっと考え続けています。
「楽しい授業はどんな授業なのか」については、正解はないと思います。皆さんのお考えをぜひコメント欄などでお聞かせいただけたらと思います。
今回のアイディアの元になっている参考文献はこちら。よかったら読んでみてください。
・「教材設計マニュアル:独学を支援するために」授業設計にも、非常に役に立つ本です。教育工学の中では短めでわかりやすい本です。(写真クリックでアマゾンリンクに飛べます)
・「アクティブ・ラーニング」を考える 文部科学省職員や中教審委員、研究者教員など様々な執筆者がアクティブ・ラーニングを解説しています。この本の印税はすべて「子供の未来応援基金」に寄付というのもすごい。(写真クリックでアマゾンリンクに飛べます)