日本語教師のとんとんです。
こちらの本を読みました(写真をクリックするとアマゾンにとびます) 鈴木賢志(2015.11)『日本の若者はなぜ希望を持てないのか』草思社
複雑な統計分析をどんな読者にも分かりやすいシンプルなグラフや表で表しています。表の読み取りとして、日本語の授業で使ってみたいと思いました。
普段、仕事で大学生と接していますが、私の学生時代と考え方が全然違うことに驚きます。「大学生を教える際、このことを知っていたらいいだろう」という個所をメモしておきます。
※内閣府が2013年11月から2月にかけて行った調査。日本、アメリカ、イギリス、スウェーデン、フランス、ドイツ、韓国の13歳~29歳が対象。
・欧米諸国では運やチャンスを成功要因とみなす人ほど希望度が有意に低いのに対して、日本と韓国はそのような有意さが見られないのである。
(中略)東洋では運やチャンスといった個人を超えた力について否定的な見方をしているわけではないということかもしれない。(pp.64-65)
日本では自分の参加によって社会が少しでも変えられると思っている若者と、そうは思っていない若者との間で、希望の持ち方に大きなギャップがある。前者の希望度がずっと高いのである。したがって、若者の政治的リテラシーを向上させて、自分の参加が社会を変えていけるのだと思えるようにし、その無力感を解消することは彼らの社会への関心の高まりにこたえることでもあるし、また彼らの将来についての希望を高めることにもなるはずである。(p .161)
・海外の人々と交流する活動を現在している、または以前したことがあるという日本の若者の割合は、わずか9.8パーセントにすぎない。(中略)その少なさは諸外国の中で際立っている。(中略)このような国際交流活動の経験のある若者の方が、ほかの若者よりも、将来について希望を持っている割合が高いということだ。具体的に言うと、国際交流活動の経験がある日本の若者の中で、将来に希望を持っているものの割合はそれぞれ78.3パーセントであるのに対して、そうした活動の経験がないもののなかでは59.8パーセントと20ポイント近いギャップがみられるのである。(pp173-174)
将来、欲しい子供の数についても、希望の有無によって明確な差が見て取れる。将来に希望のあるクループでは、子どもを3人以上ほしいという回答の割合が28パーセントに及んでいるが、これと対照的に、希望のないグループでは「子どもはほしくない」という回答の割合が25パーセントとかなり高い。(p .185)
「自分の才能を伸ばすため」/「専門的な知識を身に付ける」ために大学進学「将来に希望ある」ものと「希望がない」ものとに大きな差。将来に希望がある学生は大学が本来果たすべき機能を利用する傾向が強い。
「周りの人が進学するから」という消極的理由で進学→将来に希望を持たない若者の方が多い(pp .189-90)
政治に関して非常に関心がある若者の割合は、将来希望があってもなくてもあまり変わらないが、希望があるグループの方が「どちらかといえば関心がある」という回答の割合がぐっと高まる。(p.194)
将来に希望を持っている若者の中で 、自国に役立つと思うようなことをしたいと考えるものの割合は、63%と希望を持っていないグループの割合(40%)を大きく引き離している。(p.194)
他には、このようなテーマについて書かれていました(章立てより)。
「閉塞感を生み出す日本の低成長率と深刻な所得格差」
「自国の経済成長への信頼感が希望度を大きく高める」
「貧困率は高いのに、所得格差を感じない日本の若者」
「家庭生活に対する満足度か突出して低い日本の若者」
「離婚は本当に子供の希望を失わせるのか」(注:→失わせるわけではない)
「家族の絆や親の愛情度はドイツに完敗」
「職場への満足度、7か国中日本は最下位」
「愛国心の強さは日本がトップ」
「国際交流こそが希望度を高める秘策になる」
最後の「国際交流こそが希望度を高める秘策になる」という点が興味深いです。
留学生と日本人学生両方を教えている立場として、力を尽くせることが何かあるのではないかと、改めて思いました。