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講演レビュー:「ビジネス日本語」を教える教師に必要なこと

2023年1月28日(土)に長崎清美のオンライン講演会を聞きました。

ご講演タイトル:「ビジネス日本語」を教える教師に必要なことー学習者が職場で「いい人間関係」をつくるためにー

今年度、長崎先生のテキスト『留学生・日本で働く人のためのビジネスマナーとルールを大学指定のテキストとして初めて使ってみました。

こちらのテキストは異文化コミュニケーションに焦点を当てた活動が多かったため、グループ活動が大変盛り上がって、お気に入りのテキストとなりました。

執筆者の長崎先生のお話を直接聞きたいと思ったのが、講演会の参加のきっかけでした。

以下に、ご講演で印象に残ったお話の抜粋と、私の感想を書きたいと思います。

ニーズ調査(学習者が学びたいことを確認する)の重要性

ビジネス日本語は①これから社会に出る人②すでに働いている人の両方が学んでいるが、②すでに働いている人についてはニーズ調査がとても大事

(文字の学習は必要がない人も結構いる、ローマ字だけなど)

→たしかに私が以前、東京にあるアメリカの銀行で教えていた時も、日本語が上手(N2、N3レベル)なのに、ローマ字を使う人が結構いました。

敬語の使われ方は、企業によって全然違う。メールも丁寧に書く会社とシンプルに書く会社がある。そのようなことを知るためにもニーズ調査が必要。

→「社会人になったら、敬語を使いましょう」とシンプルに教えがちだったことを反省。 今後気をつけなければと思いました。

「いい人間関係を築く日本語」という視点

日本の企業で働く外国人は、マインドに困難を抱える人が多い。例えば

①日本のチームで仕事をするスタイル。ほうれんそう(報告・連絡・相談)の必要性についても「うまくいっているのにどうして連絡しなきゃいけないんだろう」と考えてしまう。

②日本の時間厳守の感覚がわからない。

③日本の「ウチとソト」の概念がわからない(「(自社の)部長が〜と申しております」×おっしゃっています、など)

いい人間関係の築き方は、語学学習のゴールだと思います。長崎先生の『留学生・日本で働く人のためのビジネスマナーとルールには、このような違いを学べるワークがふんだん取り入れられていました。多国籍のメンバーで異文化理解のグループ活動ができたので、大変盛り上がりました。

季節をテーマに雑談ができる。

→日本人は花の名前をよく知っていると言われます。日本人なら誰でも知っているような花や植物の名前(あじさい、もみじ、など)は、私も季節ごとに教えるようにしていますね。

話の進め方によってもいい人間関係を作れる。いきなり否定するのではなく、クッション言葉をつかうなど。

→テキストにはクッション言葉(恐れ入りますが、お手数ですが、申し上げにくいのですが、など)の練習課題が多く、とても役にたつ練習だと思いました。

実際の授業の教え方のヒント

ここでは、講演の中で話題になった、実際の授業で教える際のヒントをご紹介します。

・市販テキストは便利だけど不十分なところものある。(でも、毎回、自作教材を作るも大変なので、カスタマイズして使うといい)

・文法学習を目的としている「例文」には不自然なものがある

・会話文では、1人が話す分量が不自然に多い時がある。ターンが変わること(話者交代)が少ない相槌を入れる練習が必要

 

→日本語の実際の会話は、共話(1人ずつ交代して話すのではなく、話し手と聞き手で、一つの話を作り上げていく)のスタイルがよくみられますが、そのようなものをリスニングや会話教材に取り入れるのは実際難しいと思います。

「えっと……」とか「不明瞭な言葉」とか、実際の会話にはたくさん入っているので、そのような言葉を聞くチャンスを作っていく必要がありますね。

 

ビジネスパーソン対象の授業では、先生と学生ではなく、対等な立場で接するよう心がける

大学生対象の授業では、それらしい(ビジネス日本語らしい)雰囲気作りが大切。たとえば、ビジネスパーソンに教えるように、先生がフォーマルな話し方や、フォーマルな格好をする。先生を部長と思って学生に話させる、など

→フォーマルな雰囲気を教室に持ち込むのは、大変面白そうだと思いました!

教科書に掲載されている日本的なビジネスマナー(名刺交換、贈答、お見送りのマナー)企業文化・雇用システム(メンバーシップ型雇用、年功序列など)について様々な国の例をあげ比較してもらいます。日本式のやり方に必ずしもよい印象を持つ留学生ばかりではないようですし、私自身も旧式のやり方は変化した方がいいのでは?と感じるものもあります。

だからこそ、自分はどんな企業に就職しようか、どんな仕事をしていきたいか考えるきっかけになるのかなと思いました。

とんとん先生
とんとん先生
ビジネス日本語の授業って難しそうだと思ったけど、意外と楽しく盛り上がる授業になったよ〜!
ABOUT ME
とんとん
東京と神奈川の大学で留学生に日本語を教えています。日本語教材を作るのが好きです。 経歴:中国の大学、大学院(青年海外協力隊)、元日本語能力試験作題委員(聴解) 博士(日本語・日本文学)

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